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感想:ヒトラー 〜最後の12日間〜

この日記で映画に関しての感想を書くのは(というか"映画"というカテゴリで書いたのは)カンフーハッスル以来になる。随分間を置いたもんだ。その間にダニー・ザ・ドックやらスターウォーズやら見たはいいがうまい言葉が見つからなかった&書く時期を逃したんで、といいわけしておく。こういう線引きもどうかと思うが、これが自分だし今の所はここを変える気は毛頭無い。
閑話休題。先に言っておくのは「この映画は邦名が全てと思って見てはいけない映画」だという事。ちなみにこの映画はドイツ映画なんだが、そのタイトルは「Der Undergang」"没落"である。ヒトラーが死に、それで映画は終わるわけで無く、その周りつまり崩れ落ちていく第三帝国を描いている作品なのだ。
ヒトラーといえば第三帝国の総統、全ユダヤ人の敵だった人、右手を斜めに掲げ「ハイル!」という挨拶、美術の才能もそこそこあったが美術学校に入る事が出来ず断念し政治に没頭した人、等々言われる人だろうが、私にとってのヒトラーは映画「独裁者」の元ネタとなった人という印象が強い。何せ、映画を見始めた時期に見た映画の一つだったもんでね。NHKの年末年始の特番でチャールズ・チャップリンの特集が組まれていた時があって、それを録画して見たんですわ。その特集内で印象的だったのが「独裁者」だった。今まで無声映画を撮り続けていたチャップリンが初めて声を吹き込んだ映画だから。
この映画、前評判では『ヒトラーが人間的に描かれている』とかなんとか言われていますけど、ヒトラーって結局は人間なんだからそんな側面もあってもおかしくないと思う。むしろこの映画で寒気がしたのはヒトラーの狂信的信者だったと言われているゲッベルス夫人の行動かな。あの「es」の監督、オリヴァー・ヒルシュビーゲルだから撮れた絵なのかもしれない。
この映画の主人公はヒトラーなんだろうけど、実際にヒトラーを見ていた人が語る史実*1によって描かれている。原作者の一人であるトラウドゥル・ユンゲ女史はヒトラーの秘書を務められていた方で、自身の告白を綴ったドキュメンタリーをベルリン映画祭にて上映した当日に亡くなった方なんだそうな。自身の告白映画の上映日前後に亡くなった人という事で思い出したのはテルミン博士だった。彼はプレミア上映されたその翌日に亡くなったらしい。ご冥福をお祈りします。
あの忌まわしき戦争、第二次世界大戦終戦からかれこれ60年が経つ今年もまた、その体験者が次々とその口を永遠に閉ざしていってしまう。彼らの話に少しは耳を傾け、二の轍を踏まないようにしてみるのはいかがなものか。

*1:か、相当美化された物か今となってはわからないだろうが